昨日は最悪だった。
 買い物かごに入れた商品の値段を計算している最中、水瓶座がどうたらという声が耳に入って、ふと思い出した。
 やけに目障りな水瓶座の二人組にしてやられた後は、どこへ行っても調子が出ず、散々な結果になった。幸いにも、他のプレイヤーが奮闘したのか蠍座そのものの順位は悪くなかった。しかし彼の脳裏には水瓶座のふたりが離れないでいた。
 男のようなアバターが、頭が悪いと言ってきた。そんなはずはない。たまたま水瓶座の"蓄積"を失念して、大きな魔法の対処に手一杯だったから。そもそも一対一ならあんなに惨めな結果になるはずは。
 むしゃくしゃして珍味を手に取る。お茶と、弁当と、珍味を少し。財布を覗いて小銭を数える。ちょうどの金額が出せそうだ。
「で、結局買うの? 買わないの?」
「決めた、買わない! 四位じゃなんか、買っても仕方ない気がする! 当たるかどうかもわかんないし!」
「あんたがやっすいアイスバーをいくら買おうとも興味ないけどさ、うちの五百円アイスはどうなんの?」
「一位をとって検証してからでいいじゃん! 当たりが五個を下回ったらって話だったでしょ!」
「駄賃、協力費」
「ケチ! クズ!」
「なんとでもいいなよ、次は協力してあげないから」
「ひどい!」
「さっきから声大きいから」
 まったくだ。心のなかで同意しながら彼はレジの列につく。
 中学生ぐらいだろうか。騒ぐ少女たちの声に耳を塞ぐわけにもいかなくて、ただ舌打ちしたい心を抑えこんだ。
 レジの順番が回ってきて、バーコードを読みこんでいる間に代金を用意する。
 表示された金額はどんぴしゃり。店員が小さく礼を告げて、彼は一礼して袋を持った。
 望みどおりの展開になった、この幸運で、昨日の出来事が帳消しになればよいのに。

BACK